浜田隆政・古い撮影技法。
曇天の日の撮り方としては、私は以下六つの方法をよくつかいます。今回はその内の一つ、自作色ビニール使用 (若しくはフィルター使用)を特に紹介します。
透明のビニールを購入し、特定の筆で色をつけたり、絵を描く。それをカメラの先端につけて写すというやり方です。
- ①自作色ビニール使用 (若しくはフィルター使用):私らしさの技法
- ②ボケを利用する。被写界深度を浅く(教科書通りの内容)
- ③寄って撮る。準マクロ撮影とボケの応用(教科書通りの内容)。
- ④灰色の中に灰色の雲があれば思い切り絞る。
- ⑤空を抜いて写す。
- ⑥暗くなるまで待つ。暗くなれば、もう、晴天もその逆も関係ありません
①子どもに戻ろう。自作色ビニール使用(オリジナル技法)
(若しくはフィルター使用):私らしさの技法
これはときには思わぬ効果があります。そのためには子どもに戻り、カメラ用でなくてもよいので、各種色のついたビニールを集め、レンズの前において写す。
昔はフジから、そうしたビニールをつけるホルダーがでていました。十枚5百円程度だったと思います。勿論、ホルダーがなくても、レンズの前に色ビニールをおけば色はつきます。ビニールは物次第ですが、安いのもあります。重ねて使用するのも面白いです。時には透き通った1~5円程度のビニールに絵の具か何かで自分で色をつけるもの面白いと思います。フィルターは高いので、自分でもつくってみましょう。しかも自分でつくれば色は無限につくれます。私も昔は自作フィルターを百枚ほどつくっていました。
フィルターを自分でつくると、子ども心に戻れて楽しいかもしれません。それ以上に大変安くつくれます。それどころか、絵心でつくれば独創的なものができます。私も本年やってみる気になりました。これを書くと、また、カメラ関連メーカーから営業妨害と攻撃されるかもしれません。
市販のフィルターもCCフィルター、Leeフィルターを含め色フィルターは多数所有していました。いやな形(灰色一色)で曇った日は、思い切った攻めをしてみてはいかがでしょうか。(※1)
私も、人が思いつかないような自作フィルターで面白い写真を撮り、次年度頃に、色の付け方特集の中でここにはってみたいと思っています。

(写真№99-010-07)

(写真№99-010-14)
【上記2枚に関する撮影データと技法解説】
(a)器財は確か、Nikon F5、ED70-300(f4-5.6)、RDPⅢ(若しくはRVP)をCoolScanⅤEDでデジタル化。上記はレタッチで色をつけていない。
(b)【方法・技術】
1)ケンコーのテクニカルペーパーマウント(T.P.M) を購入します。
価格は75mm ペーパーマウント(直径60mm )が10枚入り ¥500 、100 mm ペーパーマウント(78mm) 10枚入 ¥700です。実売価格はこれよりも安いです。
2)次に、子供が使用する色のついたビニールの中から自分の必要な色を購入する。
3)上記2)を適当な大きさに切って1)に糊でつける。
4)アダプターリンクとアダプターホルダーに装着して写す。
※面倒な場合には2)までとして、後は手で適切な位置にフィルターをおけばよろしい。
5)こだわった例→透明のビニールを購入し、特定の筆で色をつけたり、絵を描く。それをカメラの先端につけて写す。
(参考)75mm ペーパーマウント。60mm 10枚入 ¥500
100mm ペーパーマウント 78mm 10枚入 ¥700
⇒これは希望価格であり、売値はこれよりも安い。
②ボケを利用する。被写界深度を浅く(教科書通りの内容)。
道に落ちている桜の花びらに焦点を当て、後は全部ぼかした。ときには、全てピンボケで撮っても良いかもしれません。これならば人が入っても肖像権にも触れません。(写真は右をほんの少しださねばなりません。失敗作ですみません)

※(D800、AF-S VR 70-300: 写真№15-010-68)
③寄って撮る。準マクロ撮影とボケの応用(教科書通りの撮り方)。
作品例→兵庫県の山あいの村で見つけた蜂の像(近くに面白い寺があった)

※{D90とAF-S50(f1.8G):写真№14-013-57}
【蛇足】AF-S50(1.8G)とAF50(1.4D)⇒対照的なレンズで別ものです。
前者はボケが硬いですが絞っても大丈夫です。後者はピントのあった所以外はボケがやわらかいです。同じ絞りf2で写しても違いがあります。芸術的表現には後者は大変むいております。その代わり、f5.6以上に絞ると画質が劣化する等々……。このレンズは使い手とカメラを選びます。使い方を間違えるとデジカメでは安物のレンズ以下の写真になります。その逆も然りです。名馬の素質を持った荒馬と同一です。フィルムカメラF5とでは最強の組合せでしたが、D800などでは一工夫しないと前者よりも落ちます。後者は今でも私のお気に入りで、必要に応じて同じ絞りでも使い分けています。別物です。ちなみにDxOmarkなどでは今でも後者はスコアの高いレンズです。
④灰色の中に灰色の雲があれば思い切り絞る。
(私を含め何人かがやっています。状況により効果は違います。)
絞りを開ければ(例えばf2.8やf3.5等々)空は灰色一色で汚くなります。(f11~f22程度に。ワイドならばf8から可能)絞れば雲のグラデーションが出る場合もあり、情感がでるときがあります。曇りの日は開けて、ボケを利用して撮るが理論ですが、その逆も写真になるときがあります。
作品例→伊藤博文、法隆寺。

{D800, SP24-70(f2.8) VC: f8, -1.5補正:写真№14-015-132}
伊藤博文と対極にあった、安重根像の写真も近々公開します。

{D800, AF-S VR16-35: f8, +1補正:写真№14-025-152}
※両方とも、絞りはf11~16にすべきでしたが回折現象を恐れて、f8に留めました。フィルムならばf16~f22で撮ったでしょう。本年中に、今度はf16程度で撮ってみます。
⑤空を抜いて写す。(教科書通りの撮影方法です)

(D800、AF-S VR16-35: 写真№15-010-047):
このレンズは使い手が良ければ良いレンズです。使い手を多少選びます。
⑥暗くなりかけるまで待つ。(推奨)
暗くなれば、もう、晴天もその逆も関係ありません。

(D800, SP24-70(f2.8)VC: 写真№15-003-055}
この日は曇っていたので、暗くなるまで待ちました。

{D800, AF-S VR 70-300: 写真№15-003-045}

{D800, AF-S VR 16-35:写真№15-003-051} 手持ち、1/15で完全に止めました。
多重露出撮影のため、SSデータは不明です。
作品例→2015年1月16日世界連邦平和像(総合案内所に使用の写真)その他多数。今秋に写真物語・安らぎの間をたちあげ、小さな旅シリーズの写真を入れ替え方式で順次紹介します。(可能な限り、今度のHPは量より質を重視願望)
【アドバイス】本当に夜景らしい撮影ができるのは24時間中5分あるかないかです。人間の目には見えない空の色温度問題があるからです。更に、場面によればハイライトとシャドウのダイナミックレンジが器財の性能を上回ることもあります。では何時が良いかは、季節・場所などにより千差万別です。人間の目では判断できません。それ以外の時間は力・技術・場面構成でねじ伏せて撮るとなります。自然が、撮ってくれといっている夜景時間は24時間中5分未満です。自然はわがままなのです。
【コメント】晴天、すき取った青空、しかも順光→一般に芸術的な写真は難しいことが多いです。気持ちが良いのは撮影者のみです。写真は、一般に、撮りたくないような状況のときほど芸術性の高いものが撮れるようです。嫌なものです。
大雨の日、台風の真っ最中の屋外、人が寝ている夜明け前、日暮れとき、強盗にあいそうな深夜(特に月がでているとき)……こういうときほどよいようです。
また、曇天の日の話に戻りますが、曇天の日は難しいですが、それだけに日頃できない思い切った実験をするのも面白いかもしれません。そのためには、撮影道具を、自分の思いついた発想で自分でつくってみましょう。それもカメラ関連マニュアルや雑誌にないようなオリジナルのものを。
ある友人カメラマンは、プロテクターにクリームを塗っていました。彼はソフトフィルターとは違う趣のある写真を撮りました。
(蛇足)晴天の青空の下での花は綺麗だ。そんなこと嘘です。私が観察した範囲では、晴天続きのときは花は勢いがありません。雨の最中に花を見ると花は生き生きしていました。雨の日ほど花はきれいでした。花を撮るならば雨の中、カサをさして、歩いて撮ってみてはいかがでしょうか。面倒なものです。嫌なものです。そういうときほど面白い写真が撮れます。人生と同じかもしれません。もっとも、私は人生は晴天、青空が良いです。
最後に、傘は便利です。三脚のネジと傘のネジは原則として同一です。よって、しっかりした傘ならば一脚になります。また、傘はフレアーやゴーストをきるのに便利です。さらに、裏か表が銀色ならばレフ板にもなります。同時に場面を引き締めるときの重要なオブジェになるときもあります。ちなみに、私の傘の柄にはLED電球がついており、懐中電灯替わりになります。
お金のある人は良い傘を持たれたほうがよいですよ。私もお金が入れば良い傘を購入して、英国にでも行きたいと思っています(紳士と錯覚されることを期待して)。
(※1)色のつけかた(いずれ特集しますが、少しだけ代表例を記入)
①色温度を利用する。→光源が白熱球ならば黄色からオレンジになります。光源が蛍光灯ならば緑色になります。光源がLEDならば青色になります。また、自然では夕方は一般に赤味を帯びる時間があります(色温度は刻一刻と変化しますので注意を)。
②ハンサー系フィルター→デジタルでは使用しないほうがよいかもしれません。
③色温度補正フィルター→例・CCフィルターなど。度数により膨大にあります。まともにそろえると数十万円程度になります。よく使用するものに限定を。
桜の葉だけ少しピンクにするときなどに使用したり、補色のものを撮るときに隠し味でつかってみる(例・空は青、稲穂は黄色。これは補色です。青+黄色=無色となります。そこで、両者を出すには、稲穂の部分だけに、薄い黄色のCCフィルターをかける等々。)
④光源に色ビニールをつける。もしくはストロボの前に色のついた物をつける。
⑤レンズの側に色フィルターをつける。今回は、自作することをお勧めしました。
もちろん、市販の通常の色フィルターもでています→例・オレンジなど
⑤撮影中か撮影後にホワイトバランス調整で色の変化をさせる。
例・ニコンならばCapture NXというソフトなどでできます。
⑥ホワイトバランス調整ではなく、もろにレタッチソフトで色を変化させる。