- （１）水俣病の解説。
……水俣病は１９５６年５月１日、チッソ付属病院の医師が「原因不明の中枢神経疾患が多発している」と保健所に届け出て、公式確認された。
今では、チッソ水俣工場でアセトアルデヒドを作る際に副生されたメチル水銀で汚染された魚を食べた人に起きたとわかっている。だが、当初は原因がわからず、「奇病」と呼ばれた。……
漁村のネコも狂い死んだ。水俣湾産の魚介類が原因で、チッソ水俣工場が汚染源と疑われた。だが、具体的な原因物質はわからなかった。症状から、マンガン、タリウム、セレンなどの物質が浮上したが、動物実験で否定された。
５９年、熊本大学医学部の研究班が「有機水銀」にたどりつく。……ネコにメチル水銀を与えると水俣病になった。
だが、チッソは「工場で使っているのは無機水銀で、有機機水銀ではない」と反論。日本化学工業協会は、終戦時に日本軍が投棄した爆弾が海中で腐食し中身が溶けたという「爆薬説」を打ち出す。
続いたのが腐敗した魚の毒が原因とする「アミン説」。応用化学の権威だった故・清浦雷作東京工業大教授らが唱えただけに、原因をめぐる科学論争は混乱をきわめた。
国も原因究明をうやむやにした。厚生省食品衛生調査会の部会は５９年１１月、有機水銀説を支持する答申をまとめたが、「所得倍増計画」を掲げ翌年に首相となる池田勇人通産相が「早計」とした。部会は解散させられた。
……
年末、チッソと患者は原因未確定のまま「見舞金契約」を結ぶ。死者は３０万円、生存者には年わずか３万～１０万円の年金だった。仕事ができず、生活に困窮していた患者たちは泣く泣く受け入れた。
水俣病問題は「見舞金」で終息したかに見えた。……国は６８年９月に、水俣病はチッソの工場排水中のメチル水銀を原因とする公害病と公式見解を発表。チッソもその４カ月前にアセトアルデヒド生産をやめた。熊本大の原因究明から９年が経過していた。
当時、厚生省公害課長だった故・橋本道夫氏は著書「私史環境行政」で、「科学的に因果関係の最も明らかな水俣病についての政府見解が最も遅れたことは、科学がいかに汚染者サイドの防御の武器としても強力なものかを示している」と指摘する。長年、被害者支援をする弘津敏男さん（５９）は「初期の対応がしっかりしていれば、被害や混乱を小さくできた」と悔やむ。
見舞金契約は裁判で無効となり、行政が患者と認定すればチッソが１６００万～１８００万円の一時金などを払う補償の枠組みができた。だが認定基準をめぐって、行政と患者団体の争いが今も続いている。｛桜井林太郎「水俣病 公害認定まで９年」（「朝日新聞」二〇一〇年七月九日所収）。｝
そして、九五年村山内閣解決策決定（政治決着）、〇四年関西訴訟最高裁判決（国・県の行政責任確定）……本年へと続く。
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- （２）水俣病全体解説に関する動画
- 水俣病→https://youtu.be/GBuV9wqNv74?t=22：このコンテンツはリンク切れになりやすいので注意（過去に何度かリンク切れ）
- 水俣病患者 資料映像≪Minamata disease (a type of poisoning caused by industrial mercury
pollution)≫
https://www.youtube.com/watch?v=qSwoO_hG61k
→※約１１分。途中音声が途切れることあり。患者闘争など。 - NHK for School 社会のトビラ 2011年度 第19回 公害[水俣病]→https://www.youtube.com/watch?v=nu93VdCWTCQ
- 「水俣病(みなまたびょう)」 を発症した患者たち→https://www.youtube.com/watch?v=GZXuntHBq04
- 水俣病 真の救済はあるのか→https://www.youtube.com/watch?v=PxO9OnbiJiQ